日々の生業に 追われ 色あせていく わが心
今年は新型コロナウイルスの影響で「STAY HOME(ステイホーム)」が求められる日々を過ごしています。今から15年前、2005年6月アメリカスタンフォード大学の卒業式でアップル社の創業者であるスティーブ・ジョブズ(1955-2011)が卒業生を前にスピーチされました。その様子はYou Tubeでもご覧になることができます。
ジョブズは「毎日を今日が人生最後の日だと思って生きよう。今日が人生最後の日だと思えば、重要な決断をする時に大きな自信となります。周囲からの期待、プライド、失敗や恥をかくことへの恐怖は、死に直面すると消え去り、真に重要なものだけが残ります。死を覚悟して生きていれば、何かを失う気がするという心配をせずに済みます。私たちの時間は限られています。無駄に他人の人生を生きないこと。他人の雑音で心の声が掻き消されないようにして下さい。そして最も大事なことは自分の直感にしたがう勇気を持つことです。心や直感は私たちが本当に何になりたいのかすでに知っています。」とスピーチの後半で言っています。死を覚悟すると、残り時間が限られている実感が生まれ、同時に時間があまりないからこそ、前を向いて思いっきり生きようというエネルギーが湧き、そして自分のやりたいことをやるチャレンジ精神が生まれます。宗祖親鸞聖人は9歳から29歳まで比叡山にてこの世での悟りを求めて学問を修められ、厳しい修行をされました。しかしながら自力の教えでは悟りに至ることができませんでした。「生死いづべき道」を求めて自分の心と直感を信じて下山し法然上人の元へ行かれ専修念仏の教えに出遇われ、雑行を棄てて本願に帰されました。
ジョブズはスピーチの一番最後にスタンフォード大学の卒業生に向かって「STAY HUNGRY、STAY FOOLISH(ハングリーであれ、愚かであれ)」と述べています。「STAY HOME」は家にとどまるという意味でしたよね。つまりSTAYとは「とどまる、居続ける」という意味です。大学を卒業してからも何かを求めてハングリー精神を持ち、愚かであり続けなさいとメッセージを送っています。親鸞聖人は『教行信証』を著述の際、各巻にご自身の名前を「愚禿釋親鸞」と記されています。親鸞聖人は、生涯にわたり「生死いづべき道」を求め続け、常にご自身のありのままの姿を顧み、阿弥陀様におまかせしお念仏を申される人生を歩まれました。
愚者のよろこび
阿弥陀如来は、「必ず救う、われにまかせよ」とよびかけておられる。そのよび声を通して、確かな救いのなかにあることをよろこぶとともに、ありのままの私の姿を、知らせていただく。
如来の光に照らされて見えてきた私の姿は、煩悩に満ちみちた迷いの凡夫であった。確かなものなど何一つ持ち得ない愚かな私であったと気づかされる。
親鸞聖人は、法然聖人より、
愚者になりて往生す
との言葉をうけたまわり、感慨をもってお手紙の中に記された。
このような私だからこそ、救わずにはおれないと、如来は限りない大悲を注いでおられる。この深き恵みをよろこばせていただくより他はない。
『拝読 浄土真宗のみ教え』より
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