葬儀で使用する法名札について

 大切な人を亡くした遺族にとって厳粛かつ心暖かに葬儀を執り行いたいことは誰もが願うことです。しかしながら、外装と儀式が先行し、本来の葬儀の意義は失われがちになっているのも事実です。その要因は様々考えられますが、葬儀についての相談が住職より担当の葬儀業者に先行しているといっても過言ではない現状です。葬儀業者主導に葬儀が行われ葬儀儀式に宗教的意味の説明がなされない事が多いのではないでしょうか。いま、あらためて厳粛な葬儀の儀式の意義を説く必要性を感じます。
 葬儀にかかわる形態は同じ宗派のなかにおいても必ずしも一様とはいえません。しかし、地域の習慣や風習に習って行っていると片付けるには余りにも残念です。
 そのような現状をふまえて、札幌組では葬儀に使用する木位牌の問題に新たな提案をして、真宗葬儀の在り方を考えてまいりました。組内寺院の皆様には深いご理解をいただき、浄土真宗の教義の上での葬儀が修行される事を切に念願するところであります。

位牌の起源について
位牌の起源は仏典にその記事は見あたらなく、中国(後漢2~3世紀)の儒教からはじまったといわれる。儒教では存命中の官位や姓名等を木札に書いてこれに神霊がとまるとお祀りした。位牌は神位を書いた札という意味。それが宋の時代に禅宗の広まりとともに、仏教に取り入れられ、日本では禅宗が盛んになるとともに、江戸時代に仏教各宗に用いられ、真宗もこの風習にならい今日に及んだと言われています。
位牌の意味するところ
儒教では死人の霊が永遠にこの位牌の中に止まると信じ、神霊の居所として位牌を祀ります。
「位牌は儒教に用いるもの・・・我親先祖等の在世の官位、姓名を書き記して、その神霊を斯に託しよらしむ故に位牌と名づく」(真俗仏事編)とあり、位牌の意味が解されている。
浄土真宗では、僧侶は得度式、門徒は帰敬式において、本山より規定の紙に書き記して法名を授与される。真宗の法名に霊位、霊儀等書くのは儒教の位牌と本質が異なるため誤りであります。又、他宗のように供養の意味がないため、法名に灯明、香華、仏飯のお供えも不要であります。ご存じのとおり、浄土真宗には他宗のような回向の風習はありません。
そのような意味から、真宗で位牌を用いているとしても、儒教のような死者の霊の止まるところや、他宗のような法名に回向するためのものではなく、あくまで、木の札に法名が記されたものを便宜上使用しているといわざるをえません。
現在葬儀で使用している位牌について
浄土真宗の場合、法名を位牌の形にはしないことになっています。法名軸か過去帳に記します。しかし、ただ、葬儀で白木の位牌に故人の法名を書き、荘厳壇(葬儀壇)に設置していますが、あれは、葬祭業者が白木の位牌しか用意していないためで、あくまでも「便宜上のもの」です。浄土真宗では厳密に言えば白木の位牌は「位牌」と呼ばないで、単に法名を書いた札(ふだ)として、「法名札(ほうみょうふだ)」と呼びます。
しかし、我々は位牌本来の意味を問わずして安易に白木の位牌を便宜上使用しています。長年の風習のなかにその意義を浄土真宗の教義にてらすことが薄れてきた現状と言われてもやむを得ません。
札幌組よりの法名札の提案
葬儀における荘厳壇に法名札入れの使用を提案致します。
「儒教の位牌」(霊が止まる)、「他宗の位牌」(回向対象の位牌)から浄土真宗の教義のうえの法名を記された法名札入れへの運動を提案致します。
なお、葬儀会社にも「浄土真宗の葬儀では木位牌は不要であり、各寺に配布された法名入れを使用すること」の通達をしていきたいと考えております。

当札幌組基幹運動推進委員会広報伝道部は、浄土真宗の葬儀で使用する木位牌について検討研修を重ねて参りました。この度、基幹運動推進委員会総会及び、札幌組組会において、葬儀で使用する木位牌に変わる法名入れを提案させていただき、皆様のご賛同をいただきましたので札幌組内の各寺院に1台を配布することに致しました。
今後、葬儀における木位牌を見直し、法名入れの使用を切に願っております。
なお、追加ご利用の方は実費(1個12,000円/送料含)をご負担していただき、広報伝道部にお申し込み下さい。