ご挨拶

暖かな日が続き、陽気に満ちた春となりました。組内各御寺院皆々様におかれましては日々お念仏相続のためにご精進のこととお慶び申し上げます。
さて、先般開催された札幌組臨時組会におきまして、石堂組長任期満了に伴い、多くの方々から御推挙を賜り、札幌組組長を拝命させていただきました。浅学非才ではありますが、皆様方の温かいご理解とご協力を賜りながら、組長という重責をお勤めさせていただきたいと思うことでございます。
又、お手伝いいただきます新執行部の構成につきましては、

組 長・実践運動委員会委員長  横湯 誓之(安楽寺住職)
実践運動委員会副委員長     打本 大志(大乗寺住職)
副 組 長           久朗津泰秀(大念寺住職)
副 組 長           松本 昇陽(真照寺住職)
副 組 長           長尾 光雲(福住寺副住職)

となります。格別のご高配と組内事業へのご協力を心からお願いいたします。
尚、この春より新体制で組運営を図るにあたり、実践運動委員会も新たな構成で活動してまいります。甚だ恐縮ではございますが、皆様の参画にもご理解とご協力を賜りますよう、宜しくお願い申し上げます。

組長 横湯誓之

今月の法話 2024年9月

命つきて終わりじゃない 別れてなお出逢うお浄土の世界

 あれは私が四十七歳の時、幼馴染みの親友の壮絶な死に出会った時の事でした。 
 朝一番機で羽田に向かい、千葉の病院に着いたのは二時を回っていました。病室に着くとご両親と彼の奥さん、一粒種のご長男が彼のベットを取り囲むようにして立っていました。すぐに彼の壮絶な顔が目に飛び込んできました。顔はやせこけ、抗がん剤で頭髪は抜け落ち、口を大きく開けて目をむき一点を凝視していました。心拍数と血圧は下がり呼吸もとても浅い状態でしたが私の声は聞こえたようで、彼の名を呼ぶと涙を流しました。人が最後まで残す感覚器官は耳なのです。
 ベットの傍らで私は彼の名前を呼び、「よくここまで頑張ったな。もう少ししたら楽になるからな。もう頑張らなくていいぞ。四十二年間お前のお陰でいい人生を送ることが出来た。有り難う。お浄土に往って先に待っていてくれよ。オレも後から必ず行くからな。また会おうな」。用意してはいなかった言葉が堰を切ったように出てきたのでした。それまで息子の名前を呼び、か細い声で「がんばれ~」と言っていたお母さんが泣き出しました。受け入れたくない我が子の死が、いよいよ現実のものとして受け入れざるを得ない、そんなお気持ちだったのだろうと今にして思います。
 私は初めての経験で、どうしていいかわからないような彼の奥さんとご長男を枕元に呼び寄せ、「最後だから何か言ってあげて下さい」、と彼女の言葉を促しました。奥さんは万感の思いを込めて「有り難う、ごめんね」。と夫に語りかけました。私は思います。彼もまた「オレこそ沢山迷惑かけてごめんな。そしてオレを支え続けてくれて有り難う」。こんなことを胸の中で呟いたのだと。
 早いものであれから二十一年が過ぎました。彼が亡くなった後、相次いでご両親が亡くなり、奥さんも亡くなりました。今年久々に彼の墓参りに行って少し早い二十三回忌法要を勤めて、心の中で様々なことを語りかけてきました。私も来年は七十歳。もうそんなに長くこの世にいることもかなわないでしょう。「そのうち会おうな」と。
 齢を重ねてしみじみと思うのは「浄土真宗で良かったなぁ。お念仏申す世界って有り難いなぁ」という事です。私の事を丸抱えで包み込んで下さって、命終の後にはお浄土が用意されている。こんな世界を頂けるとは本当に有り難いと思います。彼に再び遇うのは今しばらく先になると思いますが、阿弥陀さまに導かれながらこの人生を全うしたいと思っています。
 「命つきて終わりじゃない 別れてなお出遇うお浄土の世界」のど真ん中を生かされています。

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