今月の法話 2020年8月

出遇いに 育てられ 別れに 深められる人生

 お盆を迎え、多くの人は亡くなっていかれた方々との思い出を懐かしんでおられます。仏教の教えの中には、愛するものと別れなければならない苦しみ、「愛別離苦」という言葉があります。どれだけ愛していても、いつかその愛おしい人と必ず別れるという逃れられない現実が私たちにはあります。そんな厳しい現実を歩まねばならない私たちに対して阿弥陀様はお浄土という世界を建立して下さり、亡くなられた方々とまた会える世界をご用意して下さいました。私たちは阿弥陀仏のみ教えを疑いなく聴聞し、ご信心をいただくことによって命終えてもそれで終わらない浄土への人生がひらけるのです。懐かしい方々とまた会える世界があるからこそ、厳しい世界を力強く毎日を歩んでいくことができます。
 ドイツ・ロマン主義の抒情詩人であるノヴァーリス(1772年~1801年)は「すべての見えるものは見えないものにさわっている。すべての聴こえるものは聴こえないものにさわっている。およそ考えられることは考えられないことにさわっているのだろう」と言っています。
 お浄土に往き生まれて仏様となっていかれた懐かしい方々は、大いなる慈しみの心で私たちを真実の世界に導こうとはたらき続けて下さっています。「必ず救う、われにまかせよ」「あなたは一人じゃない」「また会おうね」とお浄土から私たちにいつも呼びかけて下さっています。仏様のはたらきは凡夫の目で見たり耳で聞いたり、直接触れたりすることはできませんが、私たちは仏様となっていかれた懐かしい方々からの願いに支えられながら、たった一度しかない人生を歩んでいます。
 童話で有名なアンデルセンは「人は悲しみを知ると本当の幸福がわかるようになり、自分にもほかの人にも優しくすることができるのです」と言っています。大切な方のご往生という悲しみを縁として、阿弥陀仏の本願の救いに出遇い、また会える世界が念仏申す私たちに用意されています。

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