今月の法話 2020年7月

悲しみの中で よろこべることが ほんとうの幸せ

 本来であれば今月下旬から東京オリンピック、続いてパラリンピックが開催される予定でしたが、新型コロナウイルスの影響により来年に延期になってしまいました。新年を迎えた時には誰も予想しなかった新型コロナウイルスの感染拡大により私たちの日常が一変してしまいました。当初予定していたことが出来なくなって辛い思いを抱えながら生活している方も多くおられると思います。とくにウイルスに感染しご往生なさった方々とそのご家族にお悔やみ申し上げます。

 『仏説無量寿経』には「和顔愛語」という言葉が出てきます。やわらかな笑顔とやさしい言葉という意味です。阿弥陀様が仏となられる前の法蔵菩薩であったときの修行の一つとして説かれています。私たちは大切な方を失った時、悲しみの真っただ中にいる時に笑うことはできません。そんな悲しみの中にいる時も絶えず阿弥陀様は「われにまかせよ、必ず救う」と私に寄り添い、私を見守り続けて下さっています。どんな時でも私を心配し見守って下さる阿弥陀様の光のはたらきが私の真っ暗闇の心に届けられています。阿弥陀様の光に出遇うからこそ、私の心が柔らかな心となり、やわらかな笑顔が生まれるのです。

 ドイツのことわざに「Humor ist,wenn man trotzdem lacht.(ユーモアとは、どんな時でも笑うことである)」とあります。このことわざは、ドイツの叙情詩人オットー・ジュリアス・ビールバウムの言葉です。ここでの「どんな時でも」とは、楽しい時ばかりでなく、辛いときでも、苦しいときでも、悲しいときでも、いつでもということです。ユーモアの語源はラテン語の「humores(フモーレス)」だといわれています。この「フモーレス」という言葉は、「体液」という意味です。つまりこれがなければ人間は生きていけないくらい非常に大切なものです。「これがなければ人間はいきてはいけない」という体液が語源となり、「ユーモア」になったのです。いま世界が新型コロナウイルスで大変な状況ではありますがお念仏を申しながら笑顔で毎日を過ごしていきましょう。

印刷用PDFファイルはこちら
PDFファイルをご覧いただくには、Adobe Reader(無料)が必要です。ダウンロード

法話バックナンバー