今月の法話 2018年3月

さよならではなく またねの世界 それがお浄土

 今から10年ほど前に『おくりびと』という映画が上映されました。主人公は俳優の本木雅弘さんで納棺師の役を演じておられました。映画の中で次のような場面が出てきました。
 主人公の同級生の実家が高齢になった母が営む町の小さな銭湯です。その同級生のお母さんが仕事中に倒れ、ご往生されます。通夜・葬儀が終わり銭湯のおかみさんのご遺体を荼毘にふすために町の火葬場に運ばれていきました。その火葬場に勤める職員の方が、運ばれてきた女性が営んでいた銭湯に毎日のように通っていた常連のお客さんでした。銭湯の常連客だった火葬場の職員の方が釜の火を入れるスイッチを押す直前に、長年お世話になった銭湯のおかみさんに向かって次のような台詞を言われます。「ありがとうの。また会おうの。私は長いことここで働いています。つくづく思うのです。死は門だなと。死ぬということは終わりではなくて、そこをくぐり抜けて次へ向かうまさに門です。私は門番としてここで沢山の人を送ってきました。いってらっしゃい、また会おうの。」
 青木新門著『納棺夫日記』を読んだ本木雅弘さんによって映画『おくりびと』が完成しました。阿弥陀仏の本願の教え、南無阿弥陀仏に出あう人生には決して永遠の別れという考え方はありません。さよならではなくまた会おうねの世界、それがお浄土です。
「かならず再び会う」
先立った方々を思えば、在りし日の面影を懐かしく思うとともに、言いようのない寂しさを覚える。
親鸞聖人は、お弟子に宛てた手紙の中で仰せになる。

浄土にてかならずかならずまちまゐらせ候ふべし

 再び会うことのできる世界がそこにある。今ここで、同じ信心をいただき、ともに阿弥陀如来の救いにあずかっている。だからこそ、かならず浄土に生まれて再び会える確かさを、今よろこぶことができる。
本願の教えに出あえた時、今ここで救われ、再び会うことのできる世界が恵まれる。

『拝読 浄土真宗のみ教え』本願寺出版社

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