周りに 流され過ぎず 己を省みよう
10月は秋が深まり、紅葉の季節を迎えます。この季節は庭先の落ち葉掃除を日課にされている方もおられると思います。
お釈迦様のお弟子の中に周利槃特(しゅりはんどく)というお方がおられました。『仏説阿弥陀経』では、お弟子たちの名の7番目に「周利槃陀伽(しゅりはんだが)」という名で登場します。
周利槃特は愚鈍で非常に記憶力が悪く、自分の名前さえも覚えられず、名前を書いてもらった札を首からぶら下げていたといいます。お釈迦様の説法を聞いてもいつも理解できず、すぐに忘れてしまいます。周利槃特はあまりに自分が愚かであるため、お釈迦様の弟子を辞めることを申し出ます。しかしお釈迦様に「自分を愚かだと分かっている者は愚かではない。賢いと思い上がり、自分の愚かさを知らぬ者が本当の愚か者である」と言われ思いとどまります。そしてお釈迦様は周利槃特に一本の箒(ほうき)を与え、つぎの一句を教えました。
「塵を払い、垢を除かん」
周利槃特は言われた通り、一心に「塵を払い、垢を除かん」と唱えながら箒を持って掃き続けました。1年、5年、10年・・・。黙々と掃きつづける周利槃特の姿を見て、はじめは彼をバカにしていた他の弟子たちも一目置くようになりました。ある日、周利槃特が掃除した場所を子供たちが遊んで汚してしまいました。彼はとっさに持っていた箒を振り上げ、「どうして綺麗に掃除したところをまた汚すんだ!」と怒鳴りました。その瞬間、彼は本当に塵や垢が積もっている場所があることにハッと気づいたのです。掃いても掃いても汚れるのは人の心も同じだと気づきました。その後も掃除に精進し、さらに歳月が流れ、周利槃特は自分の心の塵、心の垢をすっかり除くことができ、ついに阿羅漢と呼ばれる悟りの境地に到達したのです。
ちなみに周利槃特のお墓に植物が生え、その植物を見た人々は名前を忘れるくらいに物忘れが多かった周利槃特のことを偲び、いつも自分の首に名前の荷札をぶら下げていた周利槃特の生まれ変わりとして、草かんむりに名、荷札の荷で「茗荷」(ミョウガ)と名付けました。現代でもミョウガを食べると物忘れがひどくなるという俗説はここからきているという説もあります。
合掌
印刷用PDFファイルはこちら
PDFファイルをご覧いただくには、Adobe Reader(無料)が必要です。ダウンロード