今月の法話 2016年10月

人が嫌がることはしない言わない 人のしてほしい事をしよう

 「グリーフ」って言葉を御存知ですか?「グリーフ」とは、大切な人やものを失うこと(喪失)によって生じるその人なりの自然な反応や感情、プロセスのことを指し、日本語では「悲嘆」と訳されています。
 今までの人生でグリーフを一度も体験したことのない人は一人もいません。若さを失い、健康を失い、そして大切な人を失うということで私たちは何度もグリーフを味わってきました。グリーフによる反応や感情、プロセスは一人ひとり様々であり個別的なものです。そしてどんな反応や感情、プロセスも「いい」「わるい」「おかしい」ではなく自然なものです。時間が解決するものではありません。大切な人の死は「乗り越える」のではなく、いつか「立ち直る」ものでもないのです。
 完全には癒えることのないグリーフと向き合い、また亡くなった人との思い出や感情の整理に取り組む営みをグリーフワークと言います。亡くなった大切な人へ手紙を書いたり、思い出の場所に行ったり、お墓参りをしたり、仏様に手を合わせたりすること、さらに同じ経験した人が集まり思いを語り合うこともグリーフワークになります。「自分一人じゃない」「ここなら受け止めてもらえる」場があることはとても大切です。誰かのために何かをしたいという思い、相手を慮(おもんばか)ることがグリーフケアの原点です。見えないことをないことにせず、悲嘆に目を向け、耳を傾けることが大切です。
 『仏説無量寿経』の中には「和顔愛語 先意承問(和顔愛語にして、意を先にして承問す)」という言葉があります。その意味は「表情はやわらかく、言葉はやさしく、相手の心を汲み取ってよく受け入れる」ことです。グリーフケアの原点である相手の身になって和やかで穏やかな笑顔と慈愛に満ちた温かい言葉で、相手の気持ちを慮って先んじて行動することが『仏説無量寿経』に説かれていました。

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