今月の法話 2012年11月

人生における苦しみは 仏様のはげましである

 以前、あるキャッチフレーズに、「かなわない夢はない」というものがありました。
 確かに、夢を持つことは大事なことですが、夢を持つだけで、自分の思い通りの人生とはならないでしょう。例を挙げるならば、プロ野球の選手になりたいと夢見ても、才能と努力がなければ、プロ野球の選手になることはできません。
 やはり、夢をかなえるには、それに見合う才能と大変な努力が必要なのです。
 ところが、このキャッチフレーズだけに乗せられたのか、自分の人生は思い通りになるものと勘違いをして、思い通りにならないのは、社会が悪い・会社が悪い・同僚が悪い・最後は自分をこのようにした親が悪いと、周りに在るもの、周りに居る人を逆恨みして、殺人まで犯した人がいました。しかしながら、この世の中は、決して自分の思い通りになるものではありません。
 いえ、かえって思い通りにならないのが、この社会の現実の姿です。そうして、思い通りにならない人生を思い通りにして生きようとするところに、私たちの苦しみがあります。
 ところが、現代はこういう本当の人生の姿を教えずに、先ほどのキャッチフレーズの如く、まるで思い通りの人生を生きられるかの様に教えているように感じられます。
 これに対して、仏教は「人生は苦なり」、「決して思い通りにはならない人生なのだ」と教えます。そして、これが仏教の根本命題としてあるのです。この教えをよくよく頂いたならば、自身に起こる困難も、仏様の教えて下さる通りであったと、かえってその苦悩を乗り越える力が与えられることでしょう。ましてや、今、自分の思い通りになっていると思っている人がいらっしゃるならば、それは「在り得ないこと」が起こっているのですから、よほど注意をしなければならないと、自戒もできることです。

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