今月の法話 2012年6月

自分の苦しみ 他人のせいに していませんか

 ある人が、右手に荷物の袋を持って坂道をてくてくと歩いて登り始めました。その荷物は両手で持つ程までの重さではありません。ですから、最初のうちは楽な気持ちで登って行きました。ところが、登り始めて暫くすると、その袋の紐が持っている手のひらに食い込んできて、その痛みにとうとう我慢が出来なくなりました。そこで、苦しいと思ったこの人は荷物を反対の左手に持ち替えました。そして、一言「ああ、楽だ!」とつぶやきながら、また坂道を登り始めました。しかし、また暫くすると、今度は袋の紐が、楽だったはずの左の手のひらに食い込んできて、痛みに我慢できなくなりました。そこで、この人はその荷物を反対の手に持ち替えました。そしてまた、一言「ああ、楽だ!」とつぶやいて登り始めました。ところが、また暫くすると・・・。
 楽を求めながら、その楽が遅かれ早かれ苦しみとなっていく。この繰り返しが私たちの人生の姿でしょう。楽は苦の始まりであるのに、それを知ることもなく、楽だけを求めては苦を招く。
 そうです。私たちの人生は苦そのものなのです。それを、楽の時だけを自分の人生と思い、苦の時は、自分の人生ではないと他人のせいにしては、あまりに虚しい生き方です。阿弥陀仏は、虚しい人生には終わらせないと、苦も自分の人生と、しっかり受け止めて力強く生きる力を与えて下さいます。

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