今月の法話 2012年3月

いつまでも共にささえあおう すべての命へありがとう

 いま北海道では、エゾシカが増加して、北海道全域に活動範囲を広げて、農作物を荒し、木々の樹皮を剥いで枯らす等、農林業に甚大な被害を与えるということで、害獣扱いとなっています。
 確かに今まで見かけることも無かった場所でも、最近では突然に出くわし、こんなところにまで鹿が進出してきたのかと驚かされることがあります。
 そこで、北海道では近年、本格的に鹿を駆除の対象にして、昨年からは自衛隊の応援協力を得て実行しています。しかし、これを考えてみると、全ての命が共に支え合っているということを忘れた人間の身勝手さを思わずにはいられません。
 鹿の増加は、明治期に鹿を乱獲した影響で、天敵であったエゾオオカミが家畜を襲うようになったため、オオカミを駆除し絶滅させてしまったことによる影響も大きいといわれています。
 共に支え合っていることを忘れて、人間の都合で嫌いなものは排除し、好むものは大事にする。また、それが邪魔になると排除する私たちです。しかし、全ての命在るものは、人間の好き嫌いといった都合に関係なく、夫々が一つの尊い命として輝き、互いに支えあっているのです。何一つ無関係の命は無いのです。
 私たちが生きていく上においても、多くの命に支えられています。そして、その多くの命を奪って自分の命としていますが、それになかなか気付かずに当たり前のように食している私たちです。人間同士が支えあっているだけではありません。全ての命に支えられているという感謝の思いと同時に、多くの命を奪い続けてしか生きられないという罪の意識を持つことも必要でしょう。
 食前の言葉が、「多くのいのちと、みなさまのおかげにより、このごちそうをめぐまれました。」と変更になりましたが、この思いが込められたものと窺えます。

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