今月の法話 2011年3月

花は早いとも遅いともいわず ただ咲く

 家の中に置いてある植木鉢に、今冬の寒さにも負けず、元気良く長い葉を何本も伸ばしている植物があります。何の植物の葉かというと曼珠沙華(彼岸花)の葉です。関東以西では、名前の通りお彼岸の頃(ただし秋)によく見かける花です。花の色は赤が多いように思いますが、他にも白や黄があります。しかし、北海道では見たことがありません。そこで、どうにかして北海道の我が家で咲かせて、久しぶりに花を見てみたいと思い立ちました。
 ちょうど、家内が西日本の出身なので、実家の義母にお願いして、昨年の春に曼珠沙華の球根を十株ほど送ってもらったのです。花の色は赤とのことでした。
 早速にその球根を植木鉢に植えてみました。そうすると次から次へと元気に芽を出し始めました。余りに多くの芽が出て来たため、植木鉢は混雑状態に。そこで、半分は家の庭に移植して、早く花咲けと、花が咲いてくれるのを楽しみに待ちました。
 ところが、どちらも葉はぐんぐんと伸びるのですが、肝心の花を咲かせる茎がちっとも出てきません。とうとう、庭に移植した曼珠沙華は、葉っぱだけのまま、雪の下になってしまいました。
 そして、家の中に置いてある植木鉢の曼珠沙華は、花咲くこともなく葉だけを元気に伸ばしているままなのです。
 やはり、曼珠沙華は、北海道の気候で花咲かせることは出来ないのでしょう。
 私の思いとは裏腹に、花咲く条件が揃わないと決して花は咲かないものです。自然の中でその条件をあるがままに受け入れて、逆らわずその条件の中で精一杯生きているのです。それに対して、私たちはあるがままに受け入れられず、ああしたい、こうしたいと出来ないものを無理に変えようとして、思い悩み苦悩して生きています。
 この春は本州の梅の花も例年よりも、だいぶ遅れて咲きだしたようですが、遅れたというのも、私たちの都合であって、梅の花は自然のままに咲くだけなのです。

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