今月の法話 2022年5月

互いに敬い 助けあい 「なんもなんも」と 響きあう

 此あるがゆえに 彼あり
 此滅するがゆえに 彼滅し

            (中・後略/阿含経典)
 お釈迦さまのお説法にある有名なお言葉で、仏教の教えの核となる「因縁正起(縁起)」の理(ことわり)というものです。「此れ」をローソクに、「彼」を炎に例えてみましょう。
 此(ローソク)あるがゆえに 彼(炎)あり
 此(ローソク)滅するがゆえに 彼(炎)滅し

ローソクの立っていない仏具にいくら火を点けようとしても火は点きません。そこにローソクがあって初めて火を点けることができるのです。またローソクが燃え尽きることにより炎もまた滅していきます。ローソクと炎は相依り相関係しあうもの(相依相関)であり、このことを仏教では“縁起”と申します。
 私たち夫婦は7年間、子供が授かりませんでした。8年目に妊娠し、無事出産することを通して初めて親になることができたのです。誠に大きな喜びでした。子供からしても私達両親という存在があって、この世に人として生命を授かったのです。子供が誕生しなければ親になることも無く、親がいなければ子もまた誕生することはなかったのです。この生命の不思議な事実に気づかされた時に、人は大きな感動を呼び覚まされるのではないでしょうか。
 コーラスもまた同じようなことが言えます。一人で歌っていてもコーラスになりません。自分以外にハモる旋律を歌う人がいて、初めてコーラスが成立します。また、コーラスは響きが大切です。自分だけが大きな声を出して悦に入っても全体として良い響きにはなりません。相手の声をじっくりと聞き、自分の音程を確認しながら調和してこそ初めて素晴らしい響きを持ったコーラスになっていくのです。
 私達の人間関係も同じようなことが言えると思います。お互いに「あなたあっての私でありました」と頭を下げ合う時、「互いに敬い 助けあい なんもなんも と響き合う」いのちの世界が開けてくるのです。
 “縁起”の理(ことわり)はそのことを私達に教えてくれる、素晴らしい教えだと思います。

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