今月の法話 2010年11月

思いやり優しい心 本当に大切なことは かくれて見えない

 現代の世相を見ると、自分の主張をはっきりとさせて、自分の出来ること、したことを相手に認めさせるようにしなければ、生きられない世の中になってきた様に感じます。次の話しは、以前にある弁護士さんからお聞きしたことです。若い夫婦が、互いに自分のことをちっとも分かってくれないということで離婚話しが出た。子供がいる場合は、母親が親権者となることが多いのだが、子供にとっては離婚しても父親に代わりは無いので、夫側も子育ての費用を妻側に出さなければならない。そこで、夫側から養育費を月々いくらいくら支払ってもらうという取り決めをして、無事に協議離婚が成立したとする。ところが、離婚して間もなく、男性側が仕事を辞めてしまい、養育費をもらえなくなってしまうことがよくある。という話しでした。 この話しを聞いて、二つのことを考えさせられました。まず、「互いに自分のことをちっとも分かってくれない。」ということは、自己主張ばかりで、相手の心に気付くことの出来ない姿でありましょう。また、「離婚して間もなく、男性側が仕事を辞めてしまう。」というのは、離婚前まで仕事を続けられていたのは、妻子があったおかげであり、陰に日向に励ましてくれていたからではないですか。そして、安心して子育てが出来ていたのも、夫が妻子を何としても守りたいと思い、頑張ってくれていたからではないですか。 自己主張を繰り広げ、互いに相手の思いやりや、気配りになかなか気付けないままでいることの多い私たちです。しかし、今これだけ頑張っていられるのは誰のおかげだろうと、ちょっと視点を変えて考えてみることも大切なことです。実は、自分では気付かない中に、多くの思いやり、優しい心が今の私に注がれているのです。 如来様も、私たちが気付く、気付かないに関わらず、陰に日向に「南無阿弥陀仏」のお呼び声をもって、常に願いをかけて下さっているのです。

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