今月の法話 2011年1月

過去と未来を つなげてくれりる 法の絆

 私たちの人生において、愛する家族が亡くなり、いやでも別れて行かねばならないことは悲しいことではありますが、避けられない現実でもあります。そのような中、命日や故人の残していった品々に触れたときなど、ことさら思い偲ぶことも多いものです。ただ、その故人を思い偲ぶとき、過去の出来事を思い出しては懐かしむという方も多いのではないでしょうか。確かに、今ここに生きる私たちにとって、故人は過去に亡くなられた過去の思い出の中に在る方かもしれません。
 しかし、浄土真宗の御法に遭う私たちにとって、故人は、亡くなったらそれでお仕舞いというような、過去の人・思い出の人だけで終わる方ではありません。念仏申す人生を賜った者は、命終したなら直ちに往生浄土して、悟りを開かせて頂くと同時に、還相回向の菩薩という、残された者を浄土に導く働きにもならせて頂くのです。そしてまた、念仏申す人生を歩んでいる私たちも、いずれ浄土に生まれさせて頂きますが、その浄土は今の私たちには、将来生まれさせて頂く、まだ未来の世界です。ところが、過去に亡くなられた故人が、私にとっては未来の世界である浄土から、その浄土に必ず生まれさせるという、救済の活動体として働き出て下さっているのです。
 浄土真宗の御法に遇う者にとって、故人を思い偲ぶことは、その故人の過去を懐かしむだけではありません。故人は浄土から働き出でて、今ここに生きる私たちを包み、そして常に寄り添い、救済の働きとしてあることを感じ取ることでもあります。 念仏は過去・現在・未来の三世を貫き、私たちに働いているのです。

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