今月の法話 2010年6月

他者との共生を目ざして 思いやりのこころを育む道

 日本人ではフィギア・スピードとスケート陣が活躍したバンクーバー冬季オリンピックが閉幕してから、まだ三ヶ月程しか経っていませんが、なんだかとても前だったような感じです。これから夏に向かって、唐突に冬の話しもおかしいと思われる方もあるかもしれませんが、そのオリンピックの中で、メダリストのインタビューを聞いていて思ったことがあります。メダルに輝いた各国の選手が、各人それぞれに喜びの思いを答えられていましたが、その答えに二通りの表現があるように感じました。
 要約して表現しますが、一つには「自分の力を信じて、厳しい練習に耐えてこのメダルを取ることができました。」と答えられる選手。二つには「私を応援し、支えて下さった多くの皆さんのおかげでこのメダルを取ることができました。」と答えられる選手です。
 あの国際舞台でメダルを取るには、その選手の才能だけでなく、誰にも真似できないような努力が必要ですし、それは自分の力を信じなければやって行けないでしょう。ですから、前者のように答えられるのはもっともなことです。
 他方、この上に「多くの人に支えられている」という選手の答えに、何故か安堵感を覚えるのは私だけではないでしょう。
 普段何気なく生きているときは、私たちも自分の力で生きていると思い、あいつはいなくても結構などと、他者を排除し、敗者を力無いものとして片付けてしまうことがあります。しかし、浄土真宗の教えに遇うことは、その自己中心の思いを打破させられて、全ての人々に支えられ生かされている私だったと気付かされることです。「あなたがいるから私がいる。」お互いにこの思いを持って生きるなら、そこには感謝と報謝の、互いを思いやる人生・社会が広がることでしょう。

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